妊娠・出産という大仕事を終えて、「ちゃんと育てなきゃ」 「家事も完璧にやらなきゃ」 「あれ?産んだはずなのに、お腹ぽっこりのままだ。運動しなきゃ!」と、つい頑張りすぎていませんか?赤ちゃん中心の生活が始まると、自分のことは後回しになったり、無理をしてしまいがちです。
ですが、出産後すぐに頑張りすぎるのはよくありません。
その理由は、
- 体の回復が遅れてしまう
- 慢性的な不調が出やすくなる
- 更年期を迎える年代に不調が増えやすくなる
といった可能性が増えてしまうためです。
年齢の若いうちは我慢できないほどの不調がなかったとしても、後々しんどい思いをしてしまう事も多いのです。
そこで今回は「頑張り過ぎてしまうママ」に向けて、産後すぐから取り組んでほしいケア方法をお伝えします。
出産は“交通事故レベル”のダメージ!?産後の体の真実
出産は「交通事故に遭ったようなダメージ」とも言われるほど、体への負担が大きい出来事です。出産後1〜2ヶ月を”産褥期”といいます。妊娠・出産でダメージを受けたり変化をしてきた、内臓や子宮、膣、筋肉などはこの産褥期に修復・回復をしていきます。
「体を回復しやすくする」ために、「休む」ということがとても大切になります。これが産後ケアの第一歩なのです。
私は、整形外科のクリニックで多くの患者さんをみさせていただいてきました。そこで出会ったご高齢の患者様が口を揃えてこうおっしゃっていました。
「若い時にね、出産後2日目から田んぼや畑の世話してたのよ。」
「嫁に来たから、里帰りもできなくて家事も農作業も沢山して体を酷使してきたの。」
「2人目、3人目の産後から腰や足の痛みはあったけど、歩けたし我慢もできていた。
育児や家庭のこと、仕事で忙しくて自分のことなんて気にしていられなくてね。
年齢を重ねて不調がどんどん増えてきたのよ。」
「もっと若い時から、病院に行ったりケアをしておけばよかった…。」
このような声がとても多かったんです。
皆さん産後に休めなかったこと、無理を重ねてきてしまったこと、自分のことを後回しにし過ぎてしまったことを後悔していらっしゃいました。
そして、実際にお体を見させて頂いても、お腹の筋肉や骨盤底筋が上手使えないことの影響もあるなと思うことが多かったのです。
産後に体が上手く使えないまま使い続けていくと、本来使ってほしい筋肉や関節の動きが使えなかったり、体に負担の少ない使い方ができなくなってしまい、別の場所に負担がかかってしまいます。
1箇所ばかりに負担が集中してかかっていくと・・・?
そこに不調が出そうですよね。
そこをまたかばって使い続けると、別の場所にも不調が出そうですよね。
だからこそ、産後ケアをして使えていないところを使っていく練習をする必要があります。
ですが!!
その前にまず体をゆっくりと休めて回復させてあげる事が
産後もう少し日にちが経ってきて
- 「子供と一緒に遊びたいな」
- 「不調を気にせず旅行や買い物がしたいな」
- 「思う存分抱っこしたいな」
といった事を叶えていくために必要な、筋力や体の柔軟性を出していく準備・土台づくりになるのです。
では、具体的にはどうしたらいいの?と気になりますよね。
ここからは
回復に大切な「おすすめケア」を“5つ”紹介していきます。
【1】とにかく“横になる”ことを最優先に
💡 「産後1〜2ヶ月=とにかく休む」が基本!
出産後は頻回な授乳やお世話で寝不足になりがちです。また産後すぐの時期にとって、お世話や家事での立ちっぱなし・授乳などでの座りっぱなしは、体にとってかなりの負担となります。
ですので、できる限り横になる時間を確保してみましょう。
横になることで出産でダメージを受けた「骨盤底筋」への負担が軽減します。負担が大きいままだと、尿もれなどお股周りのトラブルが起きやすくなります。
横になり休むことで、体の酸素やエネルギーを回復に充てられるため、体の回復が進みやすくなるのです。
【2】睡眠・栄養・水分は“体の回復材料”
体の回復やホルモンバランス、自律神経を整えるためには、睡眠・栄養・水分補給がとても重要です。
だからこそ意識したいのは…
- 夜間授乳でまとまった睡眠が摂ることが難しい場合でも、日中に5分でも横になって仮眠の時間を確保すること
- タンパク質や炭水化物、鉄分やビタミンなどバランスを意識した食事
- こまめな水分補給(温かいお茶やお水など)
言われなくてもわかっているよ。と聞こえてきそうですし、よくいろんなところでも言われることですが、私自身も経験することで“本当に大切なんだ”と身をもって感じました。
私は第一子出産後、1時間おきの授乳で睡眠がうまく取れませんでした。また子供が抱っこでしか寝なかったので、日中横になろうと思ってもなれない状態でした。
また変なプライドもあり、家事も全て自分でしなければいけないと勘違いして、1人で不満を抱えながらこなしていました。
そうするとストレスも溜まり、過食したり、特定のものばかり欲しくなったり、間食が増えてしまいました。さまざまな原因が重なり自律神経も乱れたりして、産後うつを経験しました。
そうなると子供を心から「可愛い」と思えず、そんな自分に自己嫌悪していました。
このような経験をして、体がしんどい時に無理をすることは良くないのだと学びました。また休んだ方がいい時に無理をして、エネルギーが枯渇してしまうと、何もする気力が起こらない・人に優しく出来ない・自分はダメだと思っていくという「悪循環ループ」に入ってしまうことにも気づきました。
だからまずは、「できる範囲で」睡眠・栄養・水分をしっかりと摂り、自分の体の回復を最優先にしてあげてほしいです。
【3】軽めのストレッチで“血流と柔軟性”をサポート
いくら横になって休むのを最優先!とはいっても、育児をしているとそうもいかないことが多々あります。
- 長時間同じ姿勢での抱っこや授乳
- 猫背姿勢や前屈みでのおむつ替え
- 寝る時も子供に挟まれたり、体に痛みがあって寝返りをうまく打てない
この長時間同じ姿勢が続くことや、前屈みでの姿勢が続いてしまうことで首や肩、腰の筋肉はガチガチになり、コリを感じやすくなります。
筋肉がガチガチになると、体が硬くなって動かしにくくなっていきます。さらに血流も悪くなってしまいます。
そうすると不調が増えてしまったり、回復に必要な栄養や酸素が体に行き渡りにくくなり、回復が遅れてしまいます。
だからこそ、以下に紹介する
『1日1〜2分で出来る軽いストレッチ3つ』をぜひ、取り入れてみてください!
①伸びをする
両手を組んで頭の上に伸ばします。背骨が伸びているのを感じながら呼吸を3回行いましょう。
次に両手を横に倒して体の横、背中、脇あたりを伸ばします。伸びを感じながら呼吸を3回行いましょう。
反対側も同様に行なって見てください。

②肩甲骨ストレッチ
両手を肩に置きます。肘同士をくっつけるように近づけながら頭の上まで動かします。
肘で円を描くようにしながら回して下ろします。

③仰向けで膝を抱えて腰・お尻のストレッチ
片方の膝を抱えてお腹の方に寄せます。
お尻〜腰にかけて伸びている感じがあればOK。
反対も同様に行なって見ましょう。
腰や股関節などに痛みが出ない範囲でゆったりとやって見てください。

授乳の後、おむつ替え後、寝る前など取り入れやすいタイミングとセットにして行うと続けやすいのでオススメです!
「心地いいな」と感じる程度で行うと、ストレッチをした後は体が少しポカポカして、スッキリしますよ。
【4】呼吸を整えることで“自律神経と体幹”をリセット
産後の体は、妊娠中に崩れた姿勢や呼吸のクセが残っています。
浅くて早い呼吸が続くと、回復力が落ちたり、イライラ・不安を感じやすくなることもあるのです…。
💡深くゆっくりとした呼吸を意識してみましょう。
特に、「吐くこと」に意識を向けるのがポイントです。
鼻から吸って(3秒)口からゆっくり長く吐きます。(6秒)
息を吸うときは胸とお腹が同時に膨らみ、吐くときは胸とお腹が同時に沈んでいきます。
※このとき、首や肩、背中に力を入れて吸わない。吐くときはお腹を無理矢理へこまさないようにする。

地味に見える呼吸練習だけでも、体の内側の筋肉(インナーマッスル)や、骨盤底筋が少しずつ整い始めるので是非やって見てくださいね。
【5】“周囲に頼る”、”手を抜いてみる”ことも立派なケア
「私がやらなきゃ!」「ママが家事も育児もやるべきだ!」と思って、全部抱え込んでいませんか?
でも本当はママが元気で、そして笑顔でいることが、家族みんなの笑顔につながるんです。
そのために
- 実家・パートナー・地域のサポートサービス
- 宅配弁当や家事代行の利用
- お友達に頼る
- 家電に頼る
など利用して「休む時間を作る」事もケアの一つなんです。
誰かに頼ること=甘え、ではありません。
「回復を優先するため」「自分を大切にするため」の大切な選択です。
「私に出来るかな…?」と思っていませんか?
ここまで読んで、「でも全部やるのは無理かも…」「上の子もいるしそんなこと出来ない…」と思ったママもいるかもしれません。
ですが、ぜんぶやらなくても大丈夫。出来るところだけでも、少しだけでも大丈夫です。
🌼 大切なことはまずは横になって休む!
そして栄養や水分もしっかりととる。
それが出来て、少し動けそう!動きたいな!と感じたら、ストレッチや呼吸練習を少しずつ始めてみてください。
ストレッチや呼吸練習は、まずは1日1分するだけでもOKです。
それでも休みたくても休めないと不安になったりする方もいるかもしれません。
そう思ってしまう方は、まず
「休んでいいんだよ」と自分に許可を出すことから始めてみてくださいね。
まとめ|“体と心”を整えて、かけがえのない時間を笑顔で過ごそう
産後のケアは「特別なことをする」だけではありません。
- しっかりと休むこと
- 食べること、水分を摂ること
- ストレッチをすること
- 呼吸練習をしてリラックスすること
- 誰かを頼ること
これら5つが産後ケアの土台としてとても重要なんです。
ケアをすることで、ママの体や心が楽になり、笑顔で過ごせる時間も自ずと増えていきます。
その笑顔は、お子さんやご家族を、より笑顔にそして豊かにする力があります。
なぜそう言い切れるのか?
それは、私自身の実体験だけでなく、今まで関わらせていただいた方々から
『自分のケアをした日は、気持ちに余裕が出て子供たちに優しくなれたよ』
『いつもよりイライラしなかった』
『私が元気で笑顔でいるとね、周りも優しかったり笑顔が多い気がする』
といったお声を聞いてきているからです。
だからこそ、自分のためにも、大切な子供や家族のためにも
『ゆっくりと休んで、自分を大切にすること』 から始めてみましょう🌷
最後までお読みいただきありがとうございました。