妊娠・出産お疲れ様でした。帝王切開でご出産された方、これから帝王切開を予定されている方もいらっしゃるかと思います。
帝王切開での出産と聞くと、どのようなイメージがあるでしょうか?「怖い」、「逆子や双子の出産時にするもの」、「緊急性がある時にするもの」、「お母さんや赤ちゃんの安全のためにするもの」・・・といったお声を良く聞きます。 中には、「お腹を痛めて産んでないから陣痛を経験したお産より楽なんじゃない?」と心無いことを言われた…、なんて話も聞いたことがある方もいるかも知れません。でもそんなわけありません。実際はお腹を切って、手術を受けてお産しているので、命懸けなんです。
だからこそ、『帝王切開後の傷のケア』はとても大切なんです。
そこで、今回は
- 帝王切開後の傷のケアがなぜ大切なの?
- 自宅でできる簡単な「傷のケア方法」
をお伝えしていきます。
帝王切開後の傷のケアがなぜ大切なの?
帝王切開は手術!だからケアが必要
冒頭でも触れましたが、帝王切開は「出産」のため母体や赤ちゃんを守るために行う、体にメスを入れている手術です。だからお腹の開腹手術と同じように体にはダメージがあるということです。
例えば腰の手術をしたとしましょう。手術後行うこととはどんなことでしょうか?
それは手術をした病院での「入院・安静」と「リハビリ」、その後まだ日常生活への復帰が難しい場合は、別の病院に入院したり、通院したりして「日常生活が不自由なく送れるように練習」をしたり、「傷のケア」をしていきます。
ですが、出産後はどうでしょうか?
出産は「お母さんになった瞬間から育児がスタート」なので、
傷のケアどころじゃない!って人、すごく多いんです。
- ご実家が遠くて里帰りなし
- 上の子がいてバタバタ
- 夫のサポートが少なめ…
このような事情の方のお話も良く聞きます。本当に大変だと思います。
前回の投稿で、産後すぐの時期は体の回復を最優先にしないと、後々の不調に繋がってしまうリスクも高くなってしまうという話をしました。
この体の回復というのは傷の回復にも繋がってきます。栄養状態や血流、体の硬さが影響して傷が修復しにくくなったり、負担をかけたりすることもあるので、まずは体の回復が最優先です。
それに加えて帝王切開をした方は“傷のケア”もとても大切になるのです。
だからこそ、“傷のケア”もぜひ意識してほしいなと思います。
傷のケアもした方が良い理由を、実際に私が見させていただいた患者様の例とあわせて紹介させていただきます。
実際にあったお話|傷の違和感がずーっと続いて…
私が以前ケアさせてもらった方に、3人のお子さんを帝王切開で出産されたママがいらっしゃいました。
3人目の出産後、腰の不調が出てきて相談に来てくださいました。
詳しく話を聞いていくと、
- 今回は特に傷の治りが遅くて、ミミズ腫れみたいになってるところがある
- 触ると違和感があって、ずっと保護テープを貼ってる(産後10ヶ月たっても)
- お医者さんには6ヶ月頃には「そろそろ外していいよ」と言われてたけど、なんか怖くて外せない
そんな状態でした。
お体を見せて頂くと、寝返りや起き上がり動作、育児動作でお腹の筋肉に力が入ると傷の痛みが出ており、傷のまわりもガチガチに固くなってました。
そのせいで、お腹に力が入りにくくなって、
体も安定しづらくて、足にも力が入らない感じだったんです。
そこから少しずつ体のケアに加えて、「傷の周りのケア」も一緒に始めていくと
・痛みがなくなってきた
・違和感が消えて、テープも卒業できた
・体に力が入るようになって、動きやすくなった
…と、いい変化がどんどん出てきたんです!
「テープを貼ってる=ケアしてる」と思いがちですが、
実はテープだけに頼りすぎるのもよくありません。
時期に合わせてちゃんと“触れて動かす”ケアもすごく大事なんです。
なぜ傷周りが固くなると良くないの?
ではなぜ傷がお腹の筋肉の力の入りにくさに関係するの?と不思議に思いませんか?
その理由を簡単に説明します。これを知っていると傷のケアの重要性がより理解できるはずです。
帝王切開というのは、“皮膚”と“子宮”だけを切っている訳ではなくて、その奥にある“脂肪の層”や、“筋肉や内臓を包んだり支えたりしている筋膜”といった膜まで切っています。ー①
① 右図のような層構造になっています。
上から皮膚、皮下組織、脂肪層、筋膜・・・
本来私たちの体は、「皮膚」「その下の脂肪」「筋肉」…などそれぞれの組織の層が
お互いに“スルスル動ける、滑る(=滑走する)”ようになっています。

しかし、手術で切ったり、縫ったりすることで、その層どうしがうまく滑れず
“くっついて動きづらくなる”ことがあるんです。
そうなると…
- 傷の周りが引きつれる。固くなる
- 血流も悪くなり傷が綺麗に治りにくい
- お腹の力が入らない
…といった不調に繋がってしまうこともあります。
だから、ただ「傷を守る」だけではなくて、
“少しずつ動かしていく”ことが、大事になってきます。
産後すぐから始める!傷のケア5ステップ
自宅でもできる簡単な傷のケア方法5つをまとめました。それぞれの時期に合わせて実践してみてください!
①産後すぐ〜
起き上がり方に気をつけましょう。
腹筋のように「よいしょ」と起き上がっていませんか?
この起き上がり方法は、傷にすごく負担がかかってしまいます。
負担を少なくするコツは
「横向きになってから手で支えて起き上がる」です
これだけでもお腹の負担が全然ちがいます!
負担の少ない体の使い方を心がけてみてください。

②産後すぐ〜1ヶ月検診頃まで
痛みのない範囲で「深呼吸」をしてみましょう。
前回の投稿でも紹介した呼吸練習をすることで、お腹の筋肉が優しく動いていきます。筋肉が動くとその周りの皮膚や脂肪も動きやすくなるので、固くなっているところがほぐれていき、血流が良くなっていきます。
そうすると傷を修復がされやすくなります。
※鋭い痛みには注意。痛みを出さないようにやることが重要!
③1ヶ月検診後〜
テープの上からサワサワとタッチしてみましょう
柔らかいガーゼやタオルなどでテープの周り(傷から遠いところ)からサワサワと、そっと触れてみましょう。傷から遠いところから何か物が触れるということに慣れていきましょう。
※鋭い痛みには注意。痛みは出さないようにやることが重要!
④触れたりするのに違和感が無くなったら
③が怖くなく、違和感がなくなったら、
テープの周りから優しくゆっくり撫でてみましょう
テープから離れたところから始めて徐々に傷の近くも撫でてみてください。
※鋭い痛みには注意。痛みは出さないようにやることが重要!
⑤傷の周りを撫でたり、動かしたりしても痛みや違和感がなくなったら
(術後12週間以降〜)
傷のすぐ近くもケアOKになる時期です。
痛みや違和感がなくなったら、傷のすぐ上や上側・下側をなでたり、少しずつ動かしたりしてみてください。
※鋭い痛みには注意。痛みは出さないようにやることが重要!
皮膚や筋膜がやわらかくなると、お腹に力が入りやすくなってきます!
撫でたりマッサージをする際には、クリームなどを使用すると保湿もできて、マッサージしやすくなりますよ。
まとめ
- 傷の修復にも前回のブログに書いた内容は大切
- 傷のケアはテープを貼るだけでは足りない
- 傷の負担を減らす体の使い方も大切
- 傷の周りから触って動かして、滑走性を取り戻してあげることも重要
ママの体が元気であることは育児の土台です。
出来ることから少しずつ適切なケアをして、ご自分の大切な体を守っていきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました🌷